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想い出の場所・約束の時 〜The stardust is she's tear〜

僕は今年もまた、彼女との約束を果たすために、この場所にきていた。
『来年も一緒に星を見ようね。』
最後の夜、そう言いながら僕の隣で微笑んだ彼女が今でも忘れられない。
一歩一歩、丘を埋め尽くすように生えた草を踏みしめて歩いていく。
緩やかな傾斜を登り、彼女の待つ丘の上へ。
「やぁ。今年もまたきたよ。」
先に待っていた彼女にそう声をかける。
その場所に立つと、僕は不思議と涙で視界が霞んできた。
きみにあえてうれしいはずなのに
きみとふたたびこのよぞらをみれてうれしいはずなのに
うれしいはずなのに・・・何故か涙は止まらない。
彼女の隣に腰かけ、彼女と一緒に景色を眺める。
漆黒の海。
それに飲み込まれないよう輝きつづける星々。
淡く、優しい光を放つ月・・・。
「そういえば君は言ったね」
想い出を懐かしむように言葉をつむいでいく。
「涙はやがて星になるんだって」
「だから・・・だから涙は美しいんだって・・・」
瞳から溢れた涙が頬をつたってゆく。
「だから星に願うと想いはかなうんだって・・・」
一粒、また一粒、涙が露になってこぼれおちてゆく。
きみにまた会いたい。
一緒に笑いたい。
二人で一緒に歩んでいきたい。
「だったら・・・ぼくの願いもかなうのかな」
夜空にまたたく星に願いを込める。
『そうね・・・きっとかなうわ・・・』
彼女の声が聞こえたような気がして、はっとして彼女を見る。
再び見ても、彼女は何も答えてくれない。
「はは・・・そうだね、きっとかなうね」
そう言うと僕は立ちあがってその場所に水仙の苗をおいていく。
「じゃぁ、また来年もここにくるよ」
そう彼女に言って、僕はその丘を後にする。
彼女の墓標が立つ丘の上では、今でも美しい星々が瞬きをつづけていた。
時は流れるように進み
私はうつろいゆく時間の中で
ゆらぐように
たゆたうように
・・・それでも・・・時の流れは止まらない。
あの人は今でも私に会いにきてくれているだろうか。
あの人は今でも星空を見上げて涙しているのだろうか。
あの人は今でも一人、涙しているのだろうか。
季節はめぐりめぐって春。
私は、私に会いにきた。
春の息吹がそよぐ丘。
緑の息吹に囲まれたつ2つの墓標。
季節は再びめぐって冬。
雪が舞い散る中、咲き乱れる黄水仙。
月明かりが雪に反射し、約束の丘を光の舞台へと変えていく。
うつろいゆく時間は、ゆらぐようで、しかし確実に流れ・・・
私は再び流れの中へ。
次の生でも、私は私達に会いにいくのだろうか。
「こんにちはっ」
2つの墓標が、黄水仙に囲まれひっそりとたたずむ丘。
美しい夜空が眺められる、私のお気に入りの場所。
「きれいな場所ですよね。」
さきに来ていたらしい男の人に、そう声をかける。
「えぇ・・・本当に綺麗なところ・・・ですよね」
彼はそういって海を見下ろし、
「でも・・・なんだか悲しい気持ちになります・・・」
そういって、夜空を見上げ涙した。
「あ、それはこの丘の伝説のせいじゃですか?」
「・・・伝説?」
この丘に残る、恋人達の優しく、悲しい伝説。
若くして亡くなった彼女のため、彼女の好きだった・・・
そして恋人達の約束の場所であったこの丘に、彼は彼女の墓標を立てた。
そして彼は、毎年、毎年、約束の日に彼女の好きだった黄水仙の苗を持って、彼女との約束を果たしにきたという・・・。
どこか優しく、どこか悲しい物語・・・。
「きっと・・・2人は心から愛しあっていたんでしょうね」
そう言う私の瞳から、ひとすじの涙がこぼれていった。
「えぇ・・・本当に愛しあっていたのでしょうね・・・」
彼も再び、涙を瞳からあふれださせた。
「そうだっ、こんな話しってます?」
ゆっくりと、彼の視線が私に向かってくる。
「誰かが流した涙って、瞳からこぼれると星になるんですよ」
私もゆっくりと彼に近づき、そのほほに触れる。
「だから星に願いをかけると、願いはかなうんですって」
そういって、私は優しくほほえむ。
彼もまた、優しくほほえむ。
時の流れは、まるで水がながれるように。
ゆっくりと、時には急に。
人の生もまた水のながれのごとく。
ながれ、ながれて、元の場所に還っても、同じ水ではなく・・・。
「僕達、また会えますか?」
丘の下では海が静かに波打ち、その水面には、美しい星々がその輝きをうつしこんでいる。
「えぇ、もちろん」
私達の約束の丘では、黄水仙に囲まれた2つの墓標が、やさしく、やさしく、私達をみまもるように佇んでいる。
FIN

想い出の場所・約束の時 〜The stardust is she's tear〜

あとがき
ぁー、いつの作品だか思い出せませんw
これも恐らく2003年頃の作品じゃないかと思います。
オリジナル小説イベントの1回目か、2回目かの応募作だった気がします。
短編作品の傾向として、人物の名前が出ない事が多いですねw
逆に、名前が出てるやつは、長編のサーブストーリー的に書かれている事が多いです。
実際、短編集を移す作業していて、
「あれ、これあれの作品のサブストーリーじゃん」
とか
「ぇ、この設定出しちゃって大丈夫なの?」
とかが以外に多かったです。
まぁ・・・どうにかなるでしょうw
それと、この作品、実は『約束の時』『約束の場所』という2編をまとめてリライトしたものです。
旧バージョンとは若干変わってるので(些細な部分がですが)また読んでみてください。
2007年 6月14日 AKI
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